経営理念、社是、社訓はどのように作成すればいいのか？
企業は経営理念が重要だと言われます。
しかしながら、経営理念と似たような言葉に、社是や社員、ビジョン、ミッションステートメント、クレドなどなど、たくさんあります。
どれを採用すればいいのか、全部を採用すると、何がなんだがわからない。しかし、経営理念、社是と社訓など、企業が重視しなければならないメッセージであることは間違いありません。
ところで、社是と社訓と経営理念はどう違うのでしょうか？
この記事では、社是と社訓、経営理念の違いと、どのように社内に浸透させればいいのかを考えます。
Contents
経営理念、社是、社訓の違い
まずは、辞書的な意味で、経営理念、社是、社訓について紹介をします。
経営理念……企業行動における基本的な価値観、精神、信念、あるいは行動基準を表現したもの
社是……会社の経営上の方針・主張
社訓……その会社で働く社員の指針として定められた理念や心構え
＜広辞苑の定義より＞
この定義をもとに考えると、経営理念が中心となり社是と社訓は、経営理念の実現に向けて、どのように行動をするのかということになりそうです。
社是は、会社が主語なので、会社がどう行動するのか。
社訓は、社員が主語なので、社員がどう行動するのか。
つまり、経営理念は、会社の存在意義を示したものであり、社是と社訓は具体的な行動指針ということになります。
なぜ、経営理念が必要か？
ところで、なぜ、経営理念は必要なのでしょうか？
それは、経営理念が「何のために仕事をするのか、何を大切にするのか」という企業の考えや姿勢を示すものだからです。
私たちが生きていく上で、どんな将来を歩みたいのかという理想を持っていますね。そのために、何をして、何をしないのかを考えています。
企業は法人と言われます。個人と同じように、どんな将来を歩みたいのかを言語化することが大切です。
経営理念、社是、社訓は３つとも必要？
ところで、経営理念、社是、社訓は３つとも必要なのでしょうか？
企業によって、定める指針は違います。３つとも必要と感じるのか、ひとつでいいのかは経営者の考えによります。
私見で言いますと、多すぎるのは理解を複雑にします。
大切なことは、社員がどのように行動すればいいのかを理解するということですから、たくさんのメッセージは必要ないと考えます。
いい経営理念とは？
ところで、「いい経営理念」というものはあるのでしょうか？
悪い経営理念があるとしたら、社員が知らない、知っていても、理念を関係のない仕事をしている場合でしょう。こうした場合、経営理念を浸透させるか、新しく経営理念を策定する必要があります。
逆に、いい経営理念については、面白法人カヤックの柳澤大輔社長が、経営理念についてブログに掲載しています。非常に秀逸な見解なので、紹介します。
各社の理念を見ていくとその会社が何を大事にしているかがわかります。さらに、いい理念は、唱えるだけで会社の戦術すら浮かんできてしまうものです。
ちなみにいい理念の定義を、カヤックでは下記のように考えています。
1.成長性を示唆していること
2.理念から戦略＆戦術のヒントがあること
3.社会に貢献するものであること
https://www.kayac.com/vision/philosophy
面白法人カヤックの経営理念は、
「つくる人を増やす」
というものです。
「カヤックという法人が何のために生きているのか？」と考えた時に、この理念が生まれたと言います。また、社内で共有できるように、経営理念について、各自が、みんなの理念解釈として自分の考える解釈を言語化しています。
カヤックスタッフ各自のブログ記事はこちらからご覧いただくことができます。
https://www.kayac.com/news/2016/12/philosophy_blog_vol3
経営理念で大切なことは？
経営理念で大切なことは、企業の価値観が明確になることであり、経営判断をする際の指針となることでしょう。
抽象度が高い場合は、社員が経営理念に従った仕事をするというサポートのメッセージが必要になります。
経営理念だけで、行動までカバーすることができれば、社是、社訓は必要ないと言えます。しかし、経営理念だけで、社員の行動指針までをカバーすることは難しいので、たいていの場合は、補足的に社是や社訓が策定されています。
また、経営理念の発信スタイルは、社外にアプローチするものと社内にアプローチするものがあるようです。
各社の経営理念の紹介
ここからは、独断と偏見ですが、秀逸な経営理念や社是、社訓を紹介します。紹介するのは高収益企業ばかりです。経営理念を見ると、勝つべくして勝っていることがわかります。
まずは、日本電産の経営理念を紹介します。
社是
我社は科学・技術・技能の一体化と
誠実な心をもって
全世界に通じる製品を生産し
社会に貢献すると同時に
会社および全従業員の
繁栄を推進することをむねとする。
三つの経営基本理念
1.最大の社会貢献は雇用の創出であること
2.世の中でなくてはならぬ製品を供給すること
3.一番にこだわり、何事においても世界トップを目指すこと
三大精神
情熱、熱意、執念
知的ハードワーキング
すぐやる、必ずやる、出来るまでやる
日本電産の場合は、社是をトップに経理理念→三大精神（社訓）の順で構成されています。基本経営理念によって、会社の方向性が明確になり、三大精神は、写真の仕事への取り組み方を示すものとなっています。
https://www.nidec.com/ja-JP/corporate/about/philosophy/
次に、楽天の経営理念を紹介します。
楽天の場合は、企業理念→ミッション→ビジョン→価値観・行動指針とあり、社是と社訓に相当するのが「楽天主義」です。
楽天主義とは、楽天グループの企業理念・ビジョンを具現化していくために、すべての従業員が共有すべき価値観・行動指針です。「 楽天グループ企業倫理憲章」「行動規範8ヶ条」「ブランドコンセプト」「成功のコンセプト」「仕事の進め方」の５つから成り、グループの根幹を成す基盤となっています。
https://corp.rakuten.co.jp/about/philosophy/principle/#brand
ユニクロの場合は、ステートメントという表現を採用しています。
ステートメント─ Statement
服を変え、常識を変え、世界を変えていく
ファーストリテイリンググループのミッション
を掲げて、
Mission
私たちの価値観─ Value
私の行動規範─ Principle
という順で示されています。
価値観や行動規範をいうダイレクトな表現と用いることで、商品開発や積極におけるポリシーが明確になっています。
https://www.fastretailing.com/jp/about/frway/
ドンキホーテも、明確な経理理念を掲げています。
企業原理として、
顧客最優先主義
が掲げられ、６条の経営理念と店舗ビジョンが示されています。
https://ppi-hd.co.jp/corp/group/donki/philosophy.html
世界的な大企業に成長したGoogleも、自社の方向性を明確に示しています。
Google の使命は、世界中の情報を整理し、世界中の人がアクセスできて使えるようにすることです。
特徴的なのは、「10の事実」として、社是と社訓が合わさったものがあることでしょう。
https://www.google.com/about/philosophy.html?hl=ja
Appleにおいては、経営理念らしきものはないと言われています。日本法人のホームページを見ても、経営理念に相当するメッセージはありません。
しかし、先進的なユーザー体験を提供するという企業文化が浸透しているので、画期的な製品が生まれています。
ティム・クック氏のインタビューはこちら
経営理念の作成において考えたいこと
経理理念において、最も重要なことは、日々の経験とこれから会社が向かう方向と合っているかどうかということです。また、意思決定において、経営理念に沿った決断ができているかどうか。社員の行動規範や判断の指針となっているかどうかということです。
経営理念は、一度策定をしたら、一生変えてはいけないものではありません。頻繁に変えることはおすすめできませんが、時代や事業のモデルに合わない経営理念は再検討をすることをおすすめします。
経営理念とは、法人の人格とポリシーを示すものですから、会社のあり方とリンクさせておく必要があります。
くれぐれも、「人類の発展に貢献する」というような理念を掲げて、社員が「？？？」となることのないようにしてください。
まとめ
この記事では、経営理念、社是、社訓の違いと、高収益企業の経営理念について解説をしました。
秀逸な経営理念は、具体的であること。経営理念を読めば、会社の進む方向とそのために何をすればいいのかがわかります。
ぜひ、自社の経営理念を見直すきっかけにしてください。
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