市場が小さくなる業界で中小メーカーが生き残る方法

      2025/07/02

 

印刷業界と富士フイルムの事例から学ぶ

少子高齢化・デジタル化・グローバル競争の進展により、日本国内の多くの製造業、とりわけ印刷や紙器、フィルムなどの「成熟市場」は縮小の一途をたどっています。こうした中で、中小規模の製造業が今後も生き残り、持続可能な経営を目指すには、従来の延長線ではない戦略が求められます。

この記事では、印刷業界を例に取りながら、同様の状況にあった富士フイルムの事例も交えて、中小メーカーが取るべき経営の方向性を探ります。

 

 

1. 印刷業界に広がる構造的な縮小

 

印刷業界は、デジタルメディアの台頭により「紙への印刷需要」が長期的に減少しています。特に出版印刷や商業印刷分野では、かつて大量に出ていた雑誌・チラシ・カタログなどの仕事が激減し、多くの企業が売上減と設備過剰に悩んでいます。

中小印刷会社は、設備投資の規模や開発力の面で大手企業に比べて不利な立場にあり、ただでさえ厳しい競争環境の中で「値下げ合戦」に巻き込まれるリスクも高くなっています。

一方で、競争に負けて倒産する会社のあるので、市場が縮小するとは言え、印刷業で勝ち残ることも可能です。しかし、やはり長期的な視野に立てば、新しい戦略を検討しておく必要もあるでしょう。

2. 富士フイルムに学ぶ「逆風をチャンスに変える経営」

 

写真フィルム市場の急速な縮小という逆風に直面した富士フイルムは、そのまま衰退の道をたどっても不思議ではありませんでした。しかし、同社はそこから大胆な多角化を進め、現在では化粧品や医療機器、バイオ医薬品の分野にまで進出しています。

注目すべきは、富士フイルムが単に「業種を変えた」のではなく、自社が長年培ってきた「技術資産」と「顧客基盤」を活かす形で新分野に進出した点です。例えば、写真フィルムで培ったコラーゲン技術を応用して化粧品事業(アスタリフト)を開発し、医療画像のノウハウを活かして内視鏡などの機器開発にも成功しています。

このように、既存技術の横展開を軸に「自社の強みを再定義すること」が成功のカギを握ります。

 

3. 中小印刷会社が取るべき戦略

 

(1)ニッチ化と高付加価値化

市場が縮小している時こそ、よりニッチな分野に特化することが有効です。例えば、一般印刷から「食品包装用ラベル」や「抗菌印刷」「環境配慮型インク使用」など、用途や機能に特化した製品開発を進めることで、価格競争から脱することができます。

顧客からの要望に応じて小ロット・多品種・短納期対応を実現するなど、きめ細やかな対応も中小企業ならではの強みとなります。

しかし、ニッチな分野はさらに市場規模が小さいので、相応の売上を確保するのは困難です。さらに深掘りして考えてみましょう。

 

(2)「印刷技術」を別用途に転用する

印刷会社が保有する「色や材料を精密に制御する技術」は、他分野でも応用可能です。たとえば、電子機器の回路形成、バイオセンサーの印刷、化粧品や建材へのデザイン印刷など、新たな用途を探る余地があります。

このような技術転用の好例として、大手企業ではDNP(大日本印刷)やトッパン(TOPPAN)の戦略が挙げられます。DNPは、長年のグラビア印刷技術を応用し、液晶ディスプレイ用の光学フィルムや、食品・医薬品の高機能パッケージ、さらには「透明ディスプレイ」や「バイオチップ基板」といった最先端分野にも進出しています。

一方、トッパンは印刷インフラを活かしてセキュリティ、IoT、医療・ヘルスケア分野に力を入れています。たとえば、薬剤の偽造防止やトレーサビリティ向上を目的とした「セキュリティパッケージ」や、ヘルスケアデータの管理に対応したICTソリューションなど、従来の印刷業とは一線を画すビジネスを拡大中です。

両社ともに、印刷を「色を乗せる技術」と捉えるのではなく、「情報を機能的に担う表面加工技術」として再定義することで、既存資産を活かしながら新市場を切り拓いています。

中小企業においても、完全な模倣は難しいにせよ、このような技術応用の視点を持つことで、独自の転用先や協業先を見つけることが可能になるでしょう。

ある中小企業では、もともとポスター印刷を行っていた設備を応用し、建材用の「木目調フィルム印刷」に転用。住宅内装材のメーカーと協業することで新しい市場を開拓しました。

 

(3)顧客とのパートナー化

単なる「請け負い」ではなく、顧客と一体となって商品開発や提案活動に関わることで、長期的な取引関係を築くことができます。特に中堅の食品メーカーや日用品メーカーは、「サステナブル包装」や「脱プラスチック」への対応に迫られており、印刷会社の持つ素材知識・加工知識が価値を持ちます。単に「印刷するだけ」ではなく、「どう印刷するか」「どんな素材で表現するか」といった設計段階から入ることが、ビジネスの幅を広げます。

印刷会社自らがマーケットトレンドを読み、顧客に先回りして提案を行う体制が不可欠です。

たとえば、新聞の発行部数が年々縮小する中で、これまでの「折込チラシ」の配布方法は見直しを迫られています。こうした中、一部の印刷会社はポスティング業者と提携し、地域単位での配布精度を高める「ターゲティング型配布」や「属性別配布」の仕組みを構築。新聞購読者に限らない層へのアプローチを可能にしています。配布エリアの属性データと連携すれば、より効果的な販促計画の立案も支援できます。

また、近年ではAIを活用したデザインツールを提供する印刷会社も登場しています。テンプレートや過去のデザイン事例を学習したAIが、商品のジャンルやターゲットに合わせて「見た目の良い」チラシやパッケージデザインを半自動で提案し、企業の担当者が専門知識なしでも短時間でデザイン案を完成させられる仕組みです。

このようなサービスは「印刷まで含めた一気通貫のソリューション」として提供することで、価格競争ではなく利便性とスピードを武器にした提案型営業につながります。

さらには、エンドユーザーの購買行動データ(POSやWebアクセスなど)と連携し、どのデザインがより効果的かを可視化・改善していく「PDCA型の販促支援」に発展させることも可能です。

こうした動きの根底には、「顧客の課題を自分ごととして捉える」視点が求められます。これからの印刷会社は、単なる出力業者ではなく、マーケティング支援企業・商品開発パートナーとしてのポジションを確立していく必要があるのです。

4. 事業ドメインの再定義と「選択と集中」

 

富士フイルムの成功は、「写真フィルム会社」ではなく「画像と素材の技術を提供する会社」として、自社の事業ドメインを広く捉え直したことにあります。

中小企業においても、自社の事業を「紙に印刷する会社」ではなく、「情報とデザインを物理的に表現する会社」「機能性表面処理を行う会社」と再定義すれば、参入可能な分野は格段に広がります。

そしてその中で、自社にとって最も強みを活かせる分野に「集中」すること。何でも手を出すのではなく、選択と集中による戦略的な資源配分が、限られた人員・設備の中で成果を生むポイントです。

 

5. 最後に:未来を見据えた経営者の決断

 

市場が縮小していくのは避けがたい現実ですが、「減る市場にしがみつく」のではなく、「変化に対応する力」こそが企業の真の競争力です。

富士フイルムがそうであったように、中小企業にも「逆境の中にある資産」は必ずあります。それを見つけ、磨き、他分野へと展開していく勇気と創意工夫が、これからの経営には求められます。

“変わらないために変わる”――それが、縮小市場で中小メーカーが生き残る最も確実な方法でしょう。

 

 

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