お化け屋敷を開催してから次々と起こる心霊現象
第什話 見送ったはずなのに? (体験者:H機長)

まさか自分が、とH機長は振り返る。

ダイトクコーポレーションでは、印刷物を版に起こす2F製版室と印刷物をする1F工場がエレベーターで行き来できるようになっている。

24時間工場は稼働。
製版室に至ってはその日の印刷量にもよるが日が変わる前には誰もいないことが多い。

H機長は夕方5時ごろの出勤である。ちょうど入れ違いに製版室の唯一の女性社員が退勤をする。
お疲れ様です、と声を掛け合い今日も女性社員を見送った。

_____深夜。

今日は出勤時から多忙で、時計を見るといつのまにか日が変わってしまっていた。
食堂で休憩しようと、階段を使うのも億劫でエレベーターで製版室を通り食堂に向かおうとしていた。

「お疲れ様です。」

製版室の奥にある流し台から女性の声がした。ああ、お疲れ様・・・と空返事をして食堂へ向かった。
しかし食堂のドアノブに手をかけたときに思い出した。いま、誰かいたのか?

急いで戻ったが女性はいない。冬の寒さで冷える体がより一層冷えてしまった。
声もいつもの女性とは違っていた。

後日この話を同僚に話すとちらほらと聞くようでコロナ禍の運動不足解消のためにもしばらくは階段を使おうと思う。