201●年●月●日深夜
社員寮
体験者:ベトナム実習生
ダイトクコーポレーションでは、数年前からベトナム実習生を雇用している。
現在は常に10名以上が在籍し、会社から近い場所に一戸建てを購入し、彼らの住まいとして提供している。一戸建ての社員寮は3軒になる。
実習生には、3年間の就労期間が設けられている。
彼らはよく働き、会社に貢献してくれる。
数年前、1期生が3年の就労期間を終え、故郷に帰る日が近づいていた。社員が最後に食事会を催し、彼ら1期生の労をねぎらうことにした。会食の間、日本で経験したことや辛かった仕事の思い出、一緒に行った慰安旅行の温泉の話など、とても和やかな時間が流れていた。
そんな中、一人の日本人社員が「日本に来て一番怖かったことは何?」と質問を投げかけた。彼らは一瞬顔を見合わせ、言いにくそうに話しだした。
「日本で一番怖かったのは寮での生活です。」
不思議に思い詳しく聞いてみると第一寮の2階は6畳間が二つ並んでおり、部屋はふすまで仕切られていた。深夜、手前の6畳間からふすまを開け、奥の部屋に行こうとすると奥の部屋に着物を着た10歳くらいの女の子が微笑んで、パッと消えてしまう。それが3年間の間に数回目撃されていた。彼らはそれを報告せずずっと怖がっていたが、せっかく会社が用意してくれた寮の事を考えて黙秘していたようだ。
私たちは笑い飛ばし「それは座敷童と言って、見ると幸運を呼ぶと言われている子供の霊だよ」と教えてあげるとホッと安心したように話だした。「私たちはベトナムから来て、なにもわからない中で生活し3年間大きなケガも病気もなく、みんなと仲良くできたのは女の子のおかげだったんですね!」
一番怖い話が一番幸せな話に変わった瞬間であった。
ダイトクコーポレーションの座敷童は国際交流をする。
今日もベトナム実習生は元気に仕事をしてくれている。