お化け屋敷を開催してから次々と起こる心霊現象
第四話 エレベーターの落ち武者(体験者 社員K)

201●年●月●日午後
本社工場
体験者:社員K

ダイトクコーポレーションでは、毎日チラシを印刷している。

チラシは印刷された後に、商品の仕上がり見本として発注企業の担当者様に5~10枚の印刷物を見本としてお送りする。その為、本体の商品とは別に少ない枚数を数え取り分けし、宅急便で送る作業をする社員がいる。

以前その部署に勤務していた女性アルバイト社員Kは小さいころから幽霊が見える特殊な力を持っていた。

彼女が印刷見本を取りに行くには2階の作業場からエレベーターで工場に降り、各機械で刷り上がった商品を回収し台車に載せ2階まで運ぶことになる。

その日もいつも通り6台の機械から印刷物の回収をしていたK。一番奥にある6台目の機械に近づいていくと機械の奥に何か霊が見える。よく見てみると背中に何本もの矢が刺さった落ち武者が歩いているのが見えた。もちろん他の誰にも見えていないことはわかっていたKはそのことを誰にも言わず、急いで印刷物を回収しエレベーターで逃げるように作業場に戻った。

翌日、また機械にチラシを回収に行くと、今度は奥から2番目、5台目の機械に昨日の落ち武者がいるではないか!しかし誰にも見えていない・・・その次の日は4台目の機械に、また次の日は3台目の機械に・・・だんだんと作業場に近づいてくる。翌日、「次は2代目の機械にまで来ているのではないだろうか・・」不安を抱えながらエレベーターのボタンを押し、乗り込もうとしたところエレベーターの中に落ち武者が座っていた。

落ち武者は、Kを見て、ニヤッと笑った。

 

石川県の津幡町津幡地区の通称「平谷(へいだん)」には、平知度(たいらのとものり=平清盛の7男)の墓と伝えられている首塚が残っている。

もしかしたら、あの落ち武者は平家の残党かもしれない。

ただし、一部の社員の間では、以前に社内にあるお化け屋敷の取材で来社した村田彦二さん(ご当地「金沢おもてなし武将隊」の大将 前田慶次郎を務める)が落ち武者の格好をしていたので、生き霊が残っているのではないかとも噂されている。